BONNOU THEATER

ツイッターやってます(@bonkurabrain)。煩悩を上映する場。連絡先:tattoome.bt@gmail.com

「沖縄」とは誰なのか…『遠いところ』

約一年ぶりの更新ですね!(年始に『LAMB』評を書いたのですが、言いたいことありすぎて下書きのまま放置してます。適当にいつかアップします。)

今年も御多分に洩れずほぼ映画を見れていません!

月一本見れるといい方。だがその一本がハズレだと最悪な気分になる。というか次に見る映画のハードルが上がってしまう。だから割と何を見るか厳選しているつもりなのだが、これがなかなか難しいんだよな。

まあそんな言い訳をぐちぐち述べつつ、今回は沖縄で先行上映された映画『遠いところ』を見た。

『遠いところ』(映画.comより)

私はラップミュージックが好きで、唾奇というラッパーが好きだ。ファーストアルバムもよかったし、Sweet Williamとの共作も素晴らしいと思ってる。DJ RYOWとの『All Green』も父が死んだ時に聴きまくってた。割と思い入れのあるアーティストだ。

www.tunecore.co.jp


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そんな彼の既存の作品ではあるが、『Thanks』という曲が主題歌に使用された、沖縄のリアルを描いた『遠いところ』という映画が上映されるということで見てきた。

afarshore.jp

公式ホームページには今作の物語が以下のように紹介されている。

沖縄県・コザ。

17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾(ケンゴ)と3人で暮らし。 おばあに健吾を預け、生活のため友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、 建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。
マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。

そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。
悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵(ユキエ)の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金が必要になる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける―

若くして母となった少女が、連鎖する貧困や暴力に抗おうともがく日々の中でたどり着いた未来とは。


www.youtube.com

有名な話だが沖縄県は平均給与が全国で最も低い。出生率は全国で最も高い一方、離婚率も高い。簡単に貧困層になり得てしまう環境である。我々がリゾート地として消費し続けている沖縄の影には途方もなく根深い闇が横たわっている。

本作を撮った工藤将亮監督はおそらくいろいろと取材を重ねて脚本を練ったのだろう。沖縄、コザにおけるさまざまなケースを取材していないとこの作品に対する責任が取れないだろうから。沖縄の貧困を生きる若年層への取材を通して作り上げたのであろう主人公アオイは、夫からの暴力、貧困、ネグレクト、性的搾取、義理の親との同居、親友の死などに直面し、徹底的に沖縄の闇に叩き落とされていく。

ここで先に私が本作を通して感じたことを書いておく。

「キツすぎんだろ」

沖縄の現実がキツすぎるという意味もあるが、演出としてキツすぎるだろがメインだ。

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原発推進施設『アリス館志賀』潜入レポート~不思議の国に迷い込んだらそこは原発でした~

住んでいる地域のディープな施設を巡る。個人的にはこれを「ディープ・ツーリズム」と読んでいる。これまで北陸唯一のポルノ映画館『駅前シネマ』最終日に潜入した話などを書いてきた。
今回潜入したのは、石川県有する志賀原子力発電所のPR施設『アリス館志賀』。
 
 
前からずっと行きたいと思っていた施設にやっと行くことができた。最高にILL(※ヒップホップ用語で「病的にヤバい」という意)なスポットだったのでその全貌を紹介しておこうと思う。
『アリス館志賀』は北陸電力原子力発電を地域社会と進めていく取り組みとして運営している、簡単に言うと原発推進施設である。ちなみに「エレベーターは日立製」というどうでもいい謎情報がウィキペディアには掲載されている。
アリス館志賀は石川県の志賀町というところにあり、道中志賀原子力発電所を横目に向かうことになる。これだけでもう臨場感がヤバい。
そしてアリス館志賀全体のコンセプトはなぜか『不思議の国のアリス』。なぜこのコンセプトにしたのか謎すぎる。意味がわからなすぎてむしろその発想に恐怖すら感じる。
さすがPR施設、入場は無料である。入場するとコロナの行動証明なのかよくわからないチケットをもらった。裏面には「ご自身の行動履歴として保管してください」と記述されている。これは是非ともラミネートしてとっておきたい一品だ。

謎の券
1994年に設立したためか、「アリス館志賀」のフォントにもバブルの残り香というか、地方の寂れたラブホ感が漂っていてこれもまたいい。そもそもネーミングがラブホっぽい。
展示はアリスと仲間たちと一緒に原子力発電について学ぼうというテーマになっている。

登場人物たち

こんなのも壁に貼られている。フォトスポットらしい。
展示の入り口には「おねがい」をぶら下げたアリスが展示は一方通行であることを伝えてくれている。

展示へと誘うアリス
これからこのアリスと一緒に冒険だ!!さて、入り口はなんだかモヤ(霧)がかかっており、そこにプロジェクターで何やら映像が映し出されている。

モヤに映るアリス
実写だ…。看板のアリスとは違う…。実写版アリスが手招きしている…。普通に怖い。

最初の展示へ案内してくれるアリス。

民衆は叫び続ける!!~クレーム解放区③~

現在私が住む石川県は県知事選の真っ只中である。一体誰が当選するのか全く予測がつかない。県民の持つ1票が文字通り結果に直結しているのだ。まさしく今こそ県民は声を上げるべきだ!

 

「民衆たちの声」を聞ける身近な場所、それはショッピングモールの「お客様の声」コーナーだ!そこに貼り出されたクレームの数々、要望 a.k.a 無茶振りは私たちの気持ちを熱くさせ、共に声を上げたいと勇気を与えてくれる!!

今日はしばらく更新していなかったクレームを紹介する!

是非これまでに紹介したクレームたちとあわせて楽しんでいただきたい。

 

jzzzn.hatenablog.com

jzzzn.hatenablog.com

 

 

 

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「休憩する椅子」

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このお店(アピタ)は老人しか集まらないという特徴がある。どこを見ても「老い」という概念が徘徊しているこの建物の中で安息できる場所を探し求める人々がいる。

コロナ禍でベンチが減っていく現実は老人たちにとってかなり苛酷なものとなっているのだろう。ただ休憩が必要なほどの見どころはないようにも思うのだが…。

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『必然と創造』〜濱口竜介監督『偶然と想像』〜

最近いろいろあってやっと映画を見直す時間を作るように務めはじめた。


濱口竜介監督の『偶然と想像』を見たので少し感想を書いておこうと思う。
(新作映画をこのブログで取り扱うのは初めて?)

 

 

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©NEOPA fictive

guzen-sozo.incline.life実はこれまで濱口監督の作品は見たことがなく、『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したことも、『スパイの妻』(これも未見だが)で黒沢清と共同で脚本を作ったということも全然知らなかった。

まあ特に大きな理由もなく短編集だし軽い気持ちで「ちょっと見ておくか~」くらいの気持ちで鑑賞した。


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「路上」からの叛逆 小林勇貴監督『奈落の翅』

金沢21世紀美術館のシアター21でカナザワ映画祭2021が開催された。

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https://www.eiganokai.com/event/filmfes2021/kanazawa/index.html より引用

私は諸事情によってほぼ参加できていないのだが、開催前に「これだけは見なければいけない」という神の啓示を受けて小林勇貴監督の最新作『奈落の翅』のプレミア上映にだけは駆けつけた。

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結論から言わせてもらうとこれは大傑作だ

生涯ベスト入り確実である。

これまで『孤高の遠吠』、『逆徒』、『全員死刑』(クリスマスに劇場で鑑賞して監督たちとクリスマスソングを歌った思い出)などを見てきたが、これが一番だ。そう言い切れる。


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あらすじは以下の通り(カナザワ映画祭のホームページより引用)。

冴えないサリーマンであるジンは、夜な夜なストリートスケートに明け暮れていた。ある日過激なスケーターのイケダと出会うことで、危険な領域に踏み込んでいく。市民とのトラブル、スケーター狩り、乱闘、島流し。実際の事件をベースにした、未だかつてないスケ暴映画。

https://www.eiganokai.com/event/filmfes2021/kanazawa/event.htmlより)

www.eiganokai.com

なんといってもさすが小林映画、登場人物が魅力的すぎる。

小林組常連のウメモトジンギが演じる主人公ジンはサラリーマンと言いつつ、マルチ商法の詐欺会社で働いているのだが、彼自身も騙されながらうだつの上がらない生活を送っている。そんな彼を解放してくれるのは日が沈み暗くなった街の中を一人スケボーで滑走することだ。彼を縛りつけるこの世界から解き放たれた瞬間をその清々しい映像が伝えてくる。

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「無償の愛」と「血」という呪い 角田龍一(金星宇)監督『血筋』

先日アマゾンプライムで配信されていた角田龍一(金星宇)監督の『血筋』を見たのだが、これがとんでもない作品だった。

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https://indelible2020.com/ より

indelible2020.com

 

この作品の噂は実は前から聞いていて、2019年のカナザワ映画祭『期待の新人監督』にてグランプリを受賞した作品だった。ちょうどこのプログラムのタイミングで子どもが生まれたため、自分は参加できなかったのだが『血筋』という作品がグランプリを受賞したことはリアルタイムで知っていた。そのまま鑑賞の機会がなかったのだが、偶然アマゾンプライムで配信されているのを見つけた。(作品の時間も1時間ちょっとなので育児の合間にもサクッと見れた!)

 

 

当時カナザワ映画祭のプログラムに監督が寄せた作品紹介からどのような作品なのか引用しておくと以下の通りである。

私は、中国朝鮮族自治州・延吉で生まれ、10歳のときに日本へ移住する。20歳を迎えたとき過去を振り返るため、画家だった父を探し始める。中国の親戚に父の行方を尋ねるが、誰も消息をを知らず、父の事に触れたがらない。ドキュメンタリー作品。

https://www.eiganokai.com/event/filmfes2019/enfd/program.html#sat1415 より)

この物語は上記にもあるように「ドキュメンタリー」である。

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【情報求ム】「西浦なかよし会」を探しています

2013年ごろ韓国に行ったとき、京畿道安山市の多文化村特区という場所に行ったことがある。

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安山市は韓国有数の移住者の街だ。

多文化村というだけあって、さまざまな国の人たちが安山には集まっている。

私が訪れたときは、ストリートでいろんな国の人たちが混ざり合いながら、バレーボールなどのスポーツを楽しんでいる姿を見た。

訪れた当時の写真はないのだが、下のリンクの写真を見るとなんとなく街の雰囲気は伝わるかもしれない(文章は意味不明な部分があるけど)。

 

codecorea.github.io

このブログも多文化村特区を紹介している。

4travel.jp

 

さて、ここからが本題なのだが…

多文化村特区を街を歩いていると、さまざまな出店が並んでいるのが目につく。

さまざまな国の料理なども販売されており、豚の頭とかも売ってた記憶がある。

そして、私が訪れたときは、衣服などが破格の値段で投げ売りされていたのだ。

世界中から人が集まる土地のため、いろんな国から集められたTシャツやズボンが雑多に積まれている。なんだかロマンが敷き詰められているような気がして、一緒に来ていた友人たちとそこでTシャツをディグる(探す)ことにした。

いろいろと探してみると「すき家」の店員が着ている制服も出てくるのだ。

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現在制服は変わっているみたいだ。

日本のすき家で過去に働いていた人が制服を持ったまま安山に流れ着き、なにかのルートでこの制服を売りに出したのが、今目の前にあるものなのだとしたら、たかだかすき家の制服が壮大なストーリーを持っていることになる。なんというロマンでありなんというドラマ…。

そんなことを友人たちと話しながら私が手にとった一枚のTシャツがこれだ…。

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8年振りにタンスから引っ張り出したのでシワシワになってしまった。

このデザイン…ヤバすぎる。

「ILLすぎる」とはこのことではないのか…?

「西浦なかよし会」なのか??「なかよし会西浦」なのか??地元の集まりだけでつくられたかのようなノリのTシャツ。一体どこの誰が何の目的で作ったのかが謎すぎる。そしてなぜこの安山の地に辿り着いたのか。なかよし会のメンバーが安山に来て手放したのか?なかよし会のメンバーが別の第三者に渡してここまで辿り着いたのだろうか。そもそも何の団体なんだ…?情報はここにプリントされたジョッキがぶつかり合って星が飛ぶ景気の良いイラストしかない。タグなど他の情報は全く無い。

これは「買い」だ。運命だ。そんな出会いがあり即購入をした。

当時このTシャツからはほんのりと鮮魚や肉の混じり合った匂いがしていた…(プーケットの市場に行ったとき同じような匂いを感じた)。

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最高のデザインだ

さて、やはり気になるのはこの団体の実態である。

「西浦なかよし会」、「なかよし会西浦」どちらで検索をかけても全くヒットしない(個人的には「西浦なかよし会」のほうが語呂的に好きだ)。Tシャツのデザインを切り抜き、画像検索をかけてみても結果は同じ…。今のインターネットに全く情報がないくらいローカルな集まりによって作られたものなのだろうか…。高校時代に(無言の圧力によって半強制的に)購入させられたクラスTシャツのようなものなのか(クラTについては無限に書くことができるがここでは割愛!)。確かに、文化祭などで1〜2度着用されただけのクラTの行き着く先は寝巻きや部屋着である(クラTが背負った悲しきカルマ)。そこから考えると、このようなTシャツがなんの感情もなく持ち主の手元を離れ、海外の地へ流れていくことはあるのかもしれない。ただ私はこのTシャツはクラTとは全く性質が異なるものだと感じるのである。

そもそもクラスTシャツ以外でオリジナルのTシャツを自分たちで作る機会はほとんどないだろう。ましてやこのデザイン…。そして自分たちのグループ名を考えるときに満場一致で決まったのが「なかよし会」である。「なかよし会」で検索をかけても小学校の児童会(学童保育)の名前ばかりがヒットする中、あえてそのネーミングを使用する。とんでもないセンスをしている。そこのところを全く気にすることなく進んでいく感じ…クラTとは違い、なんというか「年配感」がすごいのだ。

私の予想としてはこの「なかよし会」はそこまで大きな集団ではない。そして「西浦」はおそらく地名を表している。「西浦」で検索すると一番最初にヒットするのは愛知県蒲郡市にある西浦温泉である。

ja.m.wikipedia.org

nishiuraonsen.com

これはかなり信憑性が高い気がする。温泉とくると自動的に「泡が溢れるビールジョッキ」を思い浮かべてしまうのは事実だ。この2つの相性は筆舌につくしがたい。

(以下は勝手な想像です)

なるほど、西浦温泉に住む観光に携わる人たちが寄り合い的な集まりで、地元の観光産業をもっと盛り上げよう!というテンションになり話が進み、「やっぱり温泉街ならビールでしょ!!」となんの捻りもないアイデアが出たのだろう。「俺たち、昔からお互いのことを知ってて家族みたいなもんじゃないか!どんな時も仲だけはよかったよな!そうだ!『なかよし会』っていう名前はどうかな!?」「賛成!!!」みたいなやり取りがあったのだろう。田舎の温泉街で結成された「なかよし会」、おそらくその中枢は年配のおじさん数人だろう。さらにそこからおじさんたちのコネを使って業者にTシャツをデザインしてもらい、製作に踏み切った。そして出来上がったTシャツは中枢と距離が近い人たち(家族・友人)に(半ば強引に)配布された。おじさんたちは数日の間そのTシャツを着用したがだんだんと着用回数が減り、さらに受け取った人たちは着用する機会も場所もなく、そのままTシャツは行き場を失い、人から人へと渡りとうとう海まで超えて韓国・安山の地へ流れ着いたのだという壮大なストーリーが頭を駆け巡る。

 

ここまでは私の勝手な想像であり、西浦温泉とは全く関係のない別の西浦で制作されたものかもしれない。ただこのTシャツが日本を離れ、遠く離れた韓国・安山の地で私と出会い、再び日本に戻ってきて今私の手元に存在している。

これは「夢の痕」だ。

色々なロマンが詰まりに詰まっている。だからこそこの団体・組織のことを知りたい。

是非情報が欲しい。

なにか知っている人がいれば連絡をして欲しい

この団体を知っている語り部と出会いたい。

というか、むしろこうなってしまったら私も「なかよし会」の一員である。

もし西浦温泉で作られたものなのだとしたらいつかこれを着て温泉街を歩いてみたい。

 

最後に「なかよし会」の一人としてもう一度。

「西浦なかよし会」についてなにか知っている人がいれば連絡をしてください!!!!

 

しかし何度も言うがこのデザイン、本当に好きすぎる。商標登録などされてなさそうなら勝手にステッカー化しようかなと考えている(小声)…。

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