BONNOU THEATER

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原発推進施設『アリス館志賀』潜入レポート~不思議の国に迷い込んだらそこは原発でした~

住んでいる地域のディープな施設を巡る。個人的にはこれを「ディープ・ツーリズム」と読んでいる。これまで北陸唯一のポルノ映画館『駅前シネマ』最終日に潜入した話などを書いてきた。
今回潜入したのは、石川県有する志賀原子力発電所のPR施設『アリス館志賀』。
 
 
前からずっと行きたいと思っていた施設にやっと行くことができた。最高にILL(※ヒップホップ用語で「病的にヤバい」という意)なスポットだったのでその全貌を紹介しておこうと思う。
『アリス館志賀』は北陸電力原子力発電を地域社会と進めていく取り組みとして運営している、簡単に言うと原発推進施設である。ちなみに「エレベーターは日立製」というどうでもいい謎情報がウィキペディアには掲載されている。
アリス館志賀は石川県の志賀町というところにあり、道中志賀原子力発電所を横目に向かうことになる。これだけでもう臨場感がヤバい。
そしてアリス館志賀全体のコンセプトはなぜか『不思議の国のアリス』。なぜこのコンセプトにしたのか謎すぎる。意味がわからなすぎてむしろその発想に恐怖すら感じる。
さすがPR施設、入場は無料である。入場するとコロナの行動証明なのかよくわからないチケットをもらった。裏面には「ご自身の行動履歴として保管してください」と記述されている。これは是非ともラミネートしてとっておきたい一品だ。

謎の券
1994年に設立したためか、「アリス館志賀」のフォントにもバブルの残り香というか、地方の寂れたラブホ感が漂っていてこれもまたいい。そもそもネーミングがラブホっぽい。
展示はアリスと仲間たちと一緒に原子力発電について学ぼうというテーマになっている。

登場人物たち

こんなのも壁に貼られている。フォトスポットらしい。
展示の入り口には「おねがい」をぶら下げたアリスが展示は一方通行であることを伝えてくれている。

展示へと誘うアリス
これからこのアリスと一緒に冒険だ!!さて、入り口はなんだかモヤ(霧)がかかっており、そこにプロジェクターで何やら映像が映し出されている。

モヤに映るアリス
実写だ…。看板のアリスとは違う…。実写版アリスが手招きしている…。普通に怖い。

最初の展示へ案内してくれるアリス。
最初の展示の題は「まほうの絵本」。真ん中にデカデカと本が鎮座している。

上部に吊るされたタイトルに注目してみると…。

副題は「原子力発電の必要性とメリット」。最初から飛ばしてんなァ。そして展示には無駄に金がかかっている感じがする。
物語はドゥドゥ鳥とアリスが出会うところからはじまる。ウサギを探しに来たアリスをドゥドゥ鳥は絵本の世界に誘う。絵本が開きそこで初めてアリスが登場する。実写だ(なんか入り口のモヤがかったアリスとは違う…)。そこに伯爵ウサギも登場!いよいよ物語が動き出す!

絵本の中に入ったアリスとウサギ。
ウサギの第一声「ハァ・・・ハァ・・・大変だ!エネルギーが足りないんだ!!」
!??!??!?!
いきなり何を言ってるんだ???困惑していると…。
ドゥドゥ鳥「ワシが説明しよう!!」
そうすると画面が切り替わり、ごく一般的な分譲住宅みたいな家屋で本を読みエアコンをつけ掃除をするアリスの映像が映る。

キッチンでお料理中のアリスが映る。
意味がわからない。
アリス「電気のおかげですごーーく快適!」
何を見せられてるんだ俺たちは。
ドゥドゥ鳥「こんな快適な生活がなくなったらみんな困るのではないかな!?」
ウサギ、アリス「困る困るゥ~」
ドゥドゥ鳥「電気が我々の生活には欠かせなくなっている。日本の発電でエースとして期待されているのが原子力発電なのだ!」
よっ!!!待ってましたっ!!!そしてここから怒涛の原発のメリットラッシュへ…!

ドゥドゥ鳥は語る!語りまくる!!
いかに原発がクリーンでリサイクル可能な発電なのか叩き込まれたアリスは最後に一言
原子力発電って不思議な力を秘めた魔法の絵本みたい!」
そして物語は大団円を迎える。
ウサギ「友達に原発のことを教えてあげようかな!」
ウサギ、勝手になんか盛り上がっているが「エネルギーが足りないんだ!」という冒頭の焦りは一体何だったんだ。
これで第一の展示は終了。というかもうお腹いっぱいだ。しかしまだ冒険は始まったばかり…。
 
順路はそのまま「ファンタジーシアター」へ。なんだかメルヘンな映像を見ることができそうだ!もう既に相当疲れたので、一休みできたらいいな。ボタンを押すと映像が流れ始める。森が描かれた垂れ幕にアリスとウサギが映し出される。
ウサギ「遅刻だ!急がなきゃ!えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ」
こいつはまた勝手に焦ってやがる。そのままウサギは穴に入って消息を絶つ。アリスはウサギを追いかけ穴に入る。
アリスに気づいたウサギが一言「せっかく来たんだからいいことを教えてあげる!」
そこから突如発電の仕組みについて語り出すウサギ。遅刻しそうだったんじゃないのか?そもそも誰も発電について聞きたいなんて言ってない。
ウサギ「もっと発電の仕組みを詳しく見てみよう!」
すると森の垂れ幕が上がる…。出てきたのは。

志賀原発の25分の1の模型だ!!!!!!!
穴の中には原発があったッッッ!!!
ウサギ「さあアリス!一緒に中に入ってみようよ!」
原発内部へ少女を誘う怪ウサギ。
ウサギ「その前にこのキャンディを食べてごらん!」
怪しい。怪しすぎる。確かに原作にも薬を飲んで小さくなるシーンがあったがいきなりこれは怪しすぎる。アリスもなんだか困惑している。そんなアリスに対して…。
ウサギ「 原子炉の中に行くんだよ!!!」
!?!??!?!?!?!!!?!
その一言に納得し飴を口に入れるアリス!そして二人は小さくなり原子炉の中へ!ウサギは饒舌に原子炉の仕組みといかに原子炉が安全なのかを述べる。
ウサギ「原子力発電所はすごーく硬い岩盤の上に建てられていて、少しくらいの地震なんか平気なんだよ!それにもし事故が起きてもその影響が外に広がらないようになっているんだ!」
このウサギはおそらくこの場所で永遠に1994年を生きている。2011年を知らないままここでひたすらアリスと来訪者を原発内に誘い込んできた極悪兎だ。それにお前んとこの志賀原発活断層の上に建てられているかどうかが今問題になっているが? もしかすると逆に「志賀原発活断層の上に建っていない」という強いメッセージなのかもしれない…。

www3.nhk.or.jpそして次へ…。

次の展示の名前は「不思議なパイプオルガン」。

「不思議なパイプオルガン」

アリスの弾くパイプオルガンに合わせて一緒に太鼓を演奏するほのぼのコーナー!アリスの演奏に合わせて目の前の8つの太鼓のうち光ったものを叩く音ゲーだ。

チェシャ猫が描かれた太鼓。
ちなみにこの太鼓、すべて同じ音。つまり音程による差はなく、ただランダムに光ったものを己の反射神経のみで叩く。どう足掻いても初見でパーフェクトは不可。あともう機材に年季が入りすぎているのか叩いた判定が厳しすぎる。間違えまくりながらもなんとか演奏を終えると…
チェシャ猫「アリス~間違えちゃダメだよ~」
アリス「私としたことが~…」
いやいやミスをしたのはこっちなのだからなんだか申し訳ない気持ちになってくる。アリスじゃなく私を責めてください…。
そんなやるせない気持ちになっていると
チェシャ猫「でも…」
ありがとう。励ましてくれるんだね。
チェシャ猫「原子力発電所はこんな間違いはしないんだ!!!!」
!?!?!?!?!!!?!?!
原子力発電所には少しでも異常があると原子炉と止める安全装置が何重にもついているんだ!みんな正面のパイプオルガンを見てくれるかな!?」
するとパイプオルガンのパイプが動き燃料棒と制御棒が現れる!
私たちがパイプオルガンだと思っていた物は原子炉だったッッッ!!!!!!!
意味が分からない!そこで緊急事態にいかにして制御棒が働くのかを必死にチェシャ猫が説明してくれる。
原発は安全なんだ!!!!絶対にミスをおかすことはないのだ!!!!

続いての展示は「アオムシ博士の青空教室」。

まずアオムシ博士、めちゃくちゃ顔が怖い。

アオムシ博士
圧倒的おじさんフェイス。
アオムシ「ちょうど今放射線のことを話そうと思ってたんだ! !」(誰に?)
アリス 「聞きたい!聞きたい!」
もうアリスは完全に原子力の虜だ…。ここではアオムシ博士と一緒にいかに人間が普段から放射線を浴びているのかみたいな話をクイズ形式で学んでいく。

こんなクイズが出るぞ!
原発放射線は危険ではなくむしろ必要なのだということをこれでもかとぶっ込んでくる。原発万歳!放射線万歳!!
 
最後を締めくくる展示は「アドベンチャーゲーム」。
それぞれがキャラを選び、障害物を避けてゴールへ向かうレース(クソゲー)とクイズで点数を競う!障害物の当たり判定が無駄に厳しく、同じレースを何回も繰り返すため終盤は発狂しそうになる。高得点を収めても特に何もいいことはない。

障害物を避けるだけのゲーム。当たり判定が異様に厳しい。
これが展示の全容である。ちなみにこの日はいくつか閉鎖されている展示もあった。必ず復活してほしい。私はその日を待っている。

 

 
だがアリス館志賀はこれで終わりではない。
我々は1階を見てきただけにすぎない。
この建物は3階建てなのだ!!!
2階にあるのは志賀原発にまつわる書籍やみんな大好きゲームコーナーが併設されている!ここにあるイカれたゲームを紹介するぞ!!
まずは「ペレットつかみ」!!!!

UFOキャッチャー形式。ガチャガチャのカプセルの中にはペレットが見える!!
原子力発電の燃料であるウランを円柱状に固めたもの、それがペレットだ!!もう少し詳しく知りたい人はここでも参照してください。

www.kepco.co.jp

ペレット(のレプリカ)を掴み、家に持ち帰ることができる!!!「抗菌・抗ウイルス銅フィルム貼付」って書いてあるが、もはやそんなレベルじゃないだろ。しかしこの日はぐあいの悪いところを直しているためお休み。。。これもまた絶対に復活してほしい…!!必ず…必ずやりにくると心に誓う。
 
さらにその横にあるものが核分裂ゲーム」だ!!
核燃料であるウラン235中性子を当てて核分裂を起こし、その点数を競うというトンデモシューティングゲームだ!!ただひたすら飛んでくるウラン235を狙って中性子を連射する!しかもなんか難しい!!英題が「ATOMIC GAME」となっているのもなんとも言えない。

その他にはなぜここに設置されたのか謎なゲームがいくつか陳列されている。是非展示の後の休憩がてら楽しんでほしい。
 
3階は展望台。
原発をこの目に焼き付けることができる!と思い上がってみると何も見えない。
パネルには原発の写真があるがその写真の下に(海側)と書かれており、陸から見ている私には何一つ見えない。見えるのは送電塔のみ。
あとはなんか原発関連の働く車の写真が並べられてて興味もないのにただ見て一周するという謎の時間だけがそこには存在する。あと北陸電力とは関係ない福浦風力発電所の風車はよく見える。
 
是非とも1〜3階、すべてを堪能してほしい。いやするべきだ。
最初はなぜ「不思議の国のアリス」がコンセプトなのかよくわからなかったが、展示を見ていくとアリスの不気味な雰囲気と原発という人間が生み出したテクノロジーのミスマッチ感が逆にアリスの世界にあっているような気もしてきた。
 
また、やり方としてうまいなと思うのは、この施設の横には割とデカ目な芝生スペースと遊具が設置してあり、平日でも親子や祖父母と孫の組み合わせで来ている人たちも多く見受けられた。

言い方は悪いが市街地からも離れた何もない場所ではこういうスペースに子連れが集まり、遊びがてら(無料だし)展示でも見ていくか的な軽いノリで来た人たちに原子力発電について知ってもらう戦略なのだろう。

入り口のマット。

このようなスポットが片田舎に存在する。それだけでロマンだ。

私が今回レポートしたことの信憑性を疑う人もいるだろう。誇張していると感じる人もいるだろう。そして行きたいけど行けないという人もいるだろう。安心してほしい。YouTubeに今回紹介した展示をアップしてくれている人たちがいる。いい時代になった。もはや場所なんて関係ない。


www.youtube.com


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これですべてを分かってもらえるはずだ。

ぜひお家でアリス館志賀の世界を体験してほしい。

 

石川県に来たら兼六園?、近江町市場?、金沢城?、21世紀美術館

『アリス館志賀』一択。