BONNOU THEATER

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カナザワ映画祭2016 〜『It is Fine! EVERYTHING IS FINE.』を観て。我々は大丈夫なのだろうか〜

カナザワ映画祭が終わってから一ヶ月が経った。

全然更新もしてないけど、ひっそりとは続けていこうかと。

今回は、クリスピン・グローヴァーの『It is Fine! EVERYTHING IS FINE.』を見た感想というか、あれを見た時に感じたものを個人的に整理したい。

まずこの作品はカナザワ映画祭オールタイムベストで『ウォーターパワー』と同率で一位というカルト的人気作品。

www.eiganokai.com

 

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ロングヘアーフェチのモテモテ障害者が、女性とセックスしたあと殺していくという物語。

簡単に言うとそれだけなんだけど、なんとも内容が詰まりすぎていて一ヶ月ずっとそのことを考えてた。

 

なんというか、見ている人間が内包している偽善的かつ道徳的に不可侵とされている(している)部分を強制的にズルムケにしてくるような感じ…(わかりづらい)。

 

上映後、クリスピン・グローヴァーはこの作品の原作者であるスティーブン・C・スチュワートは「障害者」としてこの映画を撮ったのではないと強く語っていた。

「ほうほう」と思うとともにこれが厄介なのだ。

なぜそう思うかというと、クリスピン・グローヴァーが何度もそのようにスティーブンの考えを代弁しているのに、質疑応答で「日本には『24時間テレビ』というものがあって・・・」という話しが出たり、「障害者のスティーブン」というレッテルが自然と僕らの中で出来上がり、それが僕らの視界の前に立ち塞がっているというのを非常に感じた。

 

また、映画の中で、スティーブンの言語はほとんど聞き取ることができない(「I love you」などの簡単な英語は何とか聞き取れる)。しかし、なぜかスティーブンの言葉を女性が理解していたり、物事がうまく運び過ぎたり、それを目の当たりにしたとき、少なくとも僕の頭の中には「『障害者のスティーブン』によるこれまでのルサンチマンと願望が生み出した妄想」として考えてしまうのだ。

 

スティーブンがこの映画で表した怒りは、何年も看護施設に入れられ自由を与えられなかったというところから来ているらしい。そこから来るスティーブンの怒りと、我々の目の前に立ちはだかる無意識なレッテルの壁、なんとも距離を感じたりする。

 

この映画を見た後、辺見庸がここで語っていたことを思い出した。

D.culture | すべての人間は障害者である。

「病院という閉域は、刑務所や拘置所、学校同様に、人と人の関係性がいわば制度的に偏方向的になりやすい。患者と医師、囚人と看守というように<見る>と<見られる>が不当にはっきりします」(「自分自身への審問」)。

 つまり、スティーブンがずっと体験してきたのはこのようなことなのだろう。

そして、映画を通して私たちは自然といろいろな意味で「見る」側となってしまっている。

ここに生まれるズレが言い様のない、ひっかかりを僕の中に残している。

 

この辺見庸のインタビューの中で、聞き手が「ホモ・サケル」という言葉を出している。

ホモ・サケル」とは「剥き出しの生」と言われる。

multiport.cocolog-nifty.com

『It is Fine! EVERYTHING IS FINE.』は「剥き出しの生」そのものなのではないだろうか。

 

また、この映画を見て、昔読んだ本を思い出した。

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https://www.amazon.co.jp/最重度の障害児たちが語りはじめるとき-中村尚樹/dp/4794219997#customerReviews

新約聖書ヨハネによる福音書は、「はじめに言(ことば)があった」という一文からはじまる。

聖書が真実かどうかは置いといて、言葉が世界の始まりだというのは興味深い。

スティーブンが何を話しているのか、その言葉をは僕たちには聞き取れない。

しかし「言葉」というものは、口から出て空気を振動させて相手の耳に伝わることが前提になっているのではない。

「言葉」は「アート」なのである。

「アート」世界を創る。

つまり「剥き出しの生」そのものなのだ。

 

僕たちはいつまで「見る」側なのだろうか。

「大丈夫!すべてうまくいく!でも、お前は大丈夫か?

このように訴えかけられているように感じた。

 

 

このような作品に出会えて、僕はとても嬉しく思っている。

 

 

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カナザワ映画祭2016 〜「体験」としてのマッドマックス〜

カナザワ映画祭 2016」に参加してきた。

 

www.eiganokai.com

ラインナップもとんでもない。

 

そして、今日まで行なわれているカナザワ映画祭に9日間ずっと参加して、脳みそが溶けるほどの情報量をどこかにアウトプットしないと気が狂ってしまうと思った。

 

 

ということで、とりあえず一本目。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

野外爆音上映@横安江町商店街)

www.eiganokai.com

 

言わずもがなの2015年随一の超傑作カルト映画。

私も何度も劇場で鑑賞しました。

立川シネマシティが音響設備をリニューアルして極上爆音上映をしたときにもそのためだけに上京しました。

散々いろいろなところで書かれていますので、内容自体にはもう触れる必要はないかと。

 

この野外爆音上映、まず無料で商店街で行うという気狂いっぷり!!

私も前日は寝れず、出勤前に会場を訪問するという奇行に。

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このスクリーンのでかさ!!!!

しかも本当に商店街の中!

しかも隣にはお寺!

もうこの時点で「不謹慎」極まりないのではないか。

 

近くにはたくさんの商店が並んでいる。

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廃れたコンドームの自販機もいい味を出してた。

 

そしていよいよ夜!!!

割と余裕を持って向かったつもりが、もう既に人で賑わっている!

ウォーボーイズの格好をした人もちらほら。

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夜も更けてきた…。

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うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!

 

そしてなぜかスクリーンの前には太鼓がセッティングされている。

今回の野外爆音上映は、和太鼓チームDIA+と花の宴による和太鼓演奏が予定されていたのだ!

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しかもみんなこいつの格好!

 

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そして、劇中のBGM『BLOOD BAG』などを演奏!!!

圧巻!テンション上がりまくり!

 

そしていよいよ…!

「MY NAME IS MAX...」

(映画の画像はいろいろとややこしい利権の問題があるだろうから載せるのはやめとく…。)

 

全国から集ったウォーボーイズ、ウォーガールズは大興奮の大絶叫!

しかし、このときからもう雨がポツポツと…。

そしてカーチェイスがはじまる頃には豪雨!!!!!!

これでもかというくらいの土砂降り!!!!!

しかし、みんな「アクア・コーラ」を浴びながら大興奮は続く!!!(むしろ感謝している様子も…)

私はポンチョを用意していたので何とかなりました(おしりは水たまりに座ってたけど)が、中には純粋にアクア・コーラを浴びる猛者たちも!!

近くにいたウォーボーイズのコスプレをした人たちは、みるみるうちに普通の人に戻っていく!!!

 

これがリアル4DX!!!!!

 

そして爆音上映のため、音がいちいちお腹にズシンときてこれまた最高。

 

そしてこれまたすごいのが、字幕が全てアンゼ訳ではなくなっているところ!!

 

これまでアンゼ訳を見ていて、ちょっとここおかしくない?

みたいなのがちょくちょくあって、

(明らかに「insane」て言ってるのに、映画のタイトルでもある「MAD」って単語を使いたいんだろうな、みたいなよくわからない訳とか)

違和感を感じてたんだけど、調べてみると今回の訳はDIYした模様!!!

eiganokai.blog.fc2.com

なんだこのモチベーション…。

「フクシマ!」

とかまでもしっかり訳されとる…。

 

そして上映が終わることには全身びしょびしょ。

全員本当に闘い抜いた感じ。

知らない人たちだし、喋ることもないのにもう心は戦友。

 

帰宅して次の日、思い返してみると、あんまり映画の記憶がない笑

あの空間、空気感がもうすごすぎて、全てが一つの映画となっていた。

だから画面だけが映画ではないんだよなあ。

あの会場、商店街、人、全てが一つの映画で、一つのことを同時に体験をするというとんでもない異質であり、かつ貴重な時間であった。

本当に最高だった。

 

やっぱり、映画というものは、「観る」だけのものではなくて「体験」するものなんだとしみじみ。

 

本当にいい時間だった。

 

気付けば冒頭から文体が崩れすぎてる笑

 

次回はまだ決めてないけど、カナザワ映画祭で見た映画について話をしたいと思ってます。

 

jzzzn